樹木医の手記

北の木もれ日「ハンノキ属・マメ科」

2017.1.30

<北の木もれ日「ハンノキ属・マメ科」 平成18年11月12日北海道新聞日曜版掲載>

 赤や黄に色づいた葉が、風に舞う季節になりました。

 北国では、木々の落ち葉は厳しい冬の寒さと乾燥から身を守るために、秋に葉を落とし、光合成を停止しようとするのです。

 樹木が北国で生きるための自衛手段でもありますが、時々、葉の色を変えず、緑色をしたままの落ち葉を見かけることがあります。観察するとケヤマハンノキなどの葉が多いようです。

緑色のまま落葉したケヤマハンノキの葉

緑色のまま落葉したケヤマハンノキの葉

 気温が下がると木の葉が紅や黄色に変わるのは、樹木が冬に備えて栄養を蓄えようと、葉の中にある窒素を多く含んだクロロフィル(緑色)を分解し、それを栄養として樹体内に回収するため、残ったアントシアニン(赤紫色)や、カロテノイド(黄色)という物質が目立つようになるからです。

 窒素は樹木にとって光合成を行う上で不可欠でありますが、不足しやすい栄養素でもあります。一般に樹木は、空気中の窒素を吸収することができませんが、ハンノキ属やマメ科の植物は、フランキアという放線菌の一種と共生関係にあり、菌が根に根粒というコブ状のものを形成し、このコブが地中に含まれている空気から窒素を吸収し樹木に与えます。

 ケヤマハンノキなどの葉の色が変わらないのは、共生菌のおかげで空気中の窒素を利用できるため、秋に葉から窒素をもらう必要性が低いためなのです。

 このような樹種はよく貧栄養な荒地に成育して林を形成します。土壌の栄養価が高まると、他の樹種が生育できるようになり、このときに植生の移り変わりが始まります。

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